“人は気づいた範囲では最善を尽くしている”
これはハリウッドスターであるレオナルド・ディカプリオ氏が制作・ナビゲーターを務め、地球環境危機をテーマにしたドキュメンタリー映画「THE 11TH HOUR」の中で、レイ・アンダーソン氏が引用した言葉である。この映画には50名余の科学者、思想家、活動家、リーダーらが出演し、人類が直面する重要な問題である地球環境危機について議論している。また、その解決の方法や現在行われている取り組みも紹介し、一人ひとりが行動することで解決策を見出すことができる、という未来への希望も訴えている。
アンダーソン氏は今日の地球環境危機について「いかに人間が生き方を変えるか」が問題であるとし、「人間の意識を変えるためには気づきのレベルを常に上げること そうすれば意識は高まっていく」と述べている。氏が創設した米国インターフェイス社は世界最大級のカーペットメーカーであり、製品の生産過程における廃棄物や有害な排出をなくすこと、究極的には工場から排出されるものはカーペットや生地という製品ときれいな空気と水だけにすることを目標としている。また、太陽光発電など再生可能なエネルギーの利用を追求するなど、持続可能な企業経営に取り組んでいる。正にアンダーソン氏自身が「気づいた範囲」で最善を尽くしているのである。
地球環境危機は非常に大きな問題ではあるが、一人ひとりが環境への負荷の少ない生活を指向し、自然と共生できるような暮らし方を主体的に実現していくこと、小さなことでも自分のすることに効力感を持って行動し、それを拡げていくことが解決の糸口となる。最善を尽くすためには気づきのレベルを常に上げておくことも求められる。
すこし古い調査であるが、環境庁が1995年に実施した「自然とふれあう遊びの経験と環境保全に対する考え方」は、児童期に自然とふれあう遊びの経験が多いほど「環境保全を他の豊かさよりも優先する」という意識が高く、こうした傾向は関心・知識・行動の実施状況にも示されるとし、自然とふれあう遊びが自然への親しみ感や愛情を醸成させ、人間と自然とのかかわりを知覚させるものと考えられる、と報告している。自然とのふれあいが今日における地球環境危機に対する主体的な「気づき」の契機となるのであれば、野外教育の場でそのような「気づき」の機会を善用することも意図していきたいと考えている。
2010年3月 日本野外教育学会ニュースレター No.51 巻頭言より.
「THE 11TH HOUR」のポスターにはブーツで踏まれた跡がついた地球が描かれている。
ディカプリオ氏は俳優である自分がこのような環境問題を扱う作品に出演することによ
り、若い世代にもこの問題への関心を持ってもらえることを願って、この映画を制作し
たとのこと。日本では「興行収入が見込めない」という配給元の理由により、一般上映
されていない。
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