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執筆者の写真Masao NAKAMURA

「自然」から学ぶということ

更新日:2023年4月8日



「自然を学ぶ」ということ


「野外教育」という概念があります。野外における諸々の教育実践の総称とでも言いましょうか。野外教育の先進国とされる米国では「自然に関する多くの事柄は自然との直接的な接触において最も効果的に学習される」という仮説のもとに野外教育が成立していると言われています。「自然を学ぶ」とき、内容によっては教室の中で学ぶ方が効果的なもの、教室の外で学ぶ方が効果的なものがそれぞれあると思います。例えば、ある花について学ぶとき、教室の中で図鑑や映像を利用して学ぶよりも、実際にその花が咲いているところへ出かけていってその花を目の前にして学ぶ方が良いこともあるでしょう。教室の中での学習のすべてを否定するわけではありませんが、「自然を学ぶ」とき、学習環境としての自然を活用することによって、より高い教育効果を期待することが可能であると考えられます。



「自然から学ぶ」ということ


「自然から学ぶ」ということは、言い換えれば「自然から(何かを)感じる」ということでもあると思います。同じ自然の事象に出会っても、そこから何をどのように感じるかは人によって違うこともあるでしょう。自然から何を感じるかは、その人がそれまでにどのように自然と関わってきたか、更には、子どものときにどのように自然と接したか、ということに影響されるのではないでしょうか。

 名著『沈黙の春』で知られるレイチェル・カーソンは、子どもたちには生まれつき「センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目を見はる感性」が備わっていると述べています。そして、その感性を新鮮に保ちつづけるためには「わたしたちが住んでいる世界のよろこび、感激、神秘などを子どもといっしょに再発見し、感激を分かち合ってくれる大人」が必要であることを強調しています。「自然から学ぶ」というとき、特に子どもの時代は、自然から様々なことを感じる感性を育むことに重きを置くべきでしょう。そしてそのことが、自然から学び得るものを豊かにすることにつながっていくのではないでしょうか。


体験学習の場としての自然


 居住地周辺における自然の減少に伴い、子どもたちが日常的に自然に接する機会も限られてきています。いわゆる自然体験学習が注目を集める背景もそんなところにあるといえるでしょう。

 体験学習の場として自然を活用するとき、ただ何となくその自然を活用するというのではなく、何故その自然を活用するのか、何故その活動を自然の中で行うのかを問い直すことはとても大切なことです。自然を学ぶことも、自然から学ぶことも、そうした問いかけがなければ、本当の意味での効果はあまり期待できないかもしれません。先ず、どうしてその自然なのか、どうしてその活動なのかという問いから始めてみましょう。そのことが体験学習の場としての自然を善用する第一歩になると思います。


                  1994年4月 江戸川区教育委員会 教育広報184号より.

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