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執筆者の写真Masao NAKAMURA

キャンプにおける癒やし、カウンセリング

更新日:2023年4月8日



キャンプで「いいなぁ」と思うこと

 

  みんなといっしょにキャンプをして

  いろいろなことがありました

  みんなといっしょにキャンプをして

  いろいろなことを思いました


  みんなといっしょにキャンプをして

  友だちっていいなぁ と思いました

  いろいろな人がいて いろいろなことを考えていて

  みんながみんな同じではないけれど

  それがまたおもしろいと思いました


  みんなといっしょにキャンプをして

  自然っていいなぁ と思いました

  ありのままで それらしく ふさわしく

  みんなちゃんとつながっていて

  すごいなぁと思いました

  みんなといっしょにキャンプをして

  自分っていいなぁ と思いました

  友だちっていいなぁ 自然っていいなぁ

  と思える自分はいいなぁ と思いました

  だから 友だちや自然にもいいなぁと思われるように

  なれたらいいなぁ と思いました


  みんなといっしょにキャンプをして

  いろいろなことを思いました

  みんなといっしょにキャンプをして

  キャンプっていいいなぁと思いました

 

 キャンプ指導者の多くはキャンプの有用性について各自の考えを持ち、それを基盤としてそれぞれのキャンプをつくっていくと考えられます。「指導者の数だけキャンプがある」という表現がありますが、キャンプのねらいを達成するためにプログラムを考え、キャンパーに関わり、それぞれの良しとするキャンプをキャンパーに提供する、という部分はどのキャンプもあまり変わりがないように感じられます。


 指導者の自覚する「キャンプのよさ」や「キャンプで伝えたいこと」を言語的にあるいは非言語的にキャンパーに伝えることは大切なことだと思います。ただ、その思い入れが強すぎると上手く伝わらないこともあるでしょう(強すぎたことに懲りて程々にするというのが健全なのかもしれませんが...)。また、キャンパー側に受け入れ準備が整っていない場合も実効を期待することは難しくなります。指導者がキャンパーに伝えられることは案外少ないのかもしれません。そう考えると、キャンパーが自ら「キャンプのよさ」に気づくことができるように働きかけることもひとつの方法といえるでしょう。


 キャンパーが様々な体験を通して自己有用感を持ち、キャンプでたくさんの「いいなぁ」を自分で感じることが、結果的によいキャンプをつくりあげていくことにつながると考えられます。




キャンプにおける癒し


「癒す」とは「病気や傷などを治す、肉体的・精神的苦痛を解消させる」ことであり、その原動力は「生命体としての本然の力」そのものから生じると言われています。キャンプにおける「癒し」を考えるとき、指導者が癒す(治す)ことに重きを置くのか、キャンパー自身が癒える(治る)ことに重きを置くのかについて、指導者間の一応の共通理解は持っておくべきではないでしょうか。それによってキャンパーとの関わり方も微妙に変わってくるからです。どのようなスタンスでキャンパーに関わるにしても、「癒し」そのものはキャンパーの内部から起こるものであるということを意識しておいたほうがいいと思います。


 古代中国の諺に「弟子に心の準備ができたとき、ちょうど師匠がやってくる」というものがあります。これは、人間の心の中で起こることと外界で起こる出来事の微妙なつながり方を示すものです。つまり「弟子に心の準備ができた」から「師匠がやってくる」のではなく、「弟子に心の準備ができた」ことと「師匠がやってくる」こととが共時的に生じる、ということなのです。「共時性」とは因果関係によらずに事象を連関させる考え方であり、「出来事の参与者にとって意味のある複数の出来事が、そこに『共に入ってくる』」ということです。 キャンプにおいてキャンパーが「癒し」を得るとき、それが共時的に起こることも少なくないように感じられます。もちろんその「癒し」に因果的なものがないということではありませんが、キャンパーが「何によって癒されたのか」を因果的な観点でのみ説明するのは難しいと思います。

「癒し」は「人間の存在全体が調和的であるようにすること」であり、「いい気分」が「癒し」の力を持つと言われています。キャンプにおいて「癒し」を意図するとき、それに相応しいプログラムを提供することや、活動の舞台となる自然を善用することによって、キャンパー自身の「調和」や「いい気分」を支援することは有効であると考えられます。加えて、指導者には因果的な思考のみならず、非因果的な連関を見出すセンスも求められるのではないでしょうか。



キャンプ・カウンセリング


『カウンセリング・マインド』の提唱者であるロジャースの理論の中に「無条件の肯定的関心」というものがあります。これは「(相手を)所有しようとしない温かさ」( non-possessive warmth ) と表現されたこともあるそうです。キャンプの場面でも、キャンパーを「所有」しようと思うと「こうあってほしい」「こうでないと気にいらない」といった「条件」が必要以上についてくることがよくあると思います。そのような「所有」がなく、キャンパーを尊重し肯定的に受け入れ、キャンパーが自分の中にある自分を変容させる「もの」に自ら気付き、それを自分の力でよい方向にふくらませていくことができるような、そんな働きかけができたらいいなと思います。 キャンプの実際においては、導いたほうがいいこともあると思います。でもそれもキャンパーへの「押し付け」にならないように気をつけたいものです。かと言って「キャンパーの自主性を尊重する」という考えのもとに、まったく何もしないというのでは指導者としての責任を回避しているということにもなり兼ねません。キャンパーもキャンパーと関わること自体も、ひとつとして同じでないという意味でユニークなものです。その都度自ら判断し、「導くこと」と「見守ること」のバランスを客観的に考えながらキャンパーと関わっていくことが大切であると考えられます。


 キャンプ・カウンセリングの本旨は、つきつめていくと、キャンパーが自分で自分を動かすように働きかけることであると考えられます。キャンプ・カウンセリングに「こうするとこうなる」というような定石はないと考えたほうがいいと思いますが、根本的な部分において、よいキャンプをつくりあげるという信念を持つこと、キャンパーの可能性に対して開かれた態度をとることが重要であると考えられます。


            1998年8月(社)日本キャンプ協会「キャンピング」64号より.

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