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執筆者の写真Masao NAKAMURA

野外教育(Outdoor Education)

更新日:2023年4月6日



野外教育(Outdoor Education)という用語は 1946年、米国のライフキャンプ財団の機関誌「教育の拡大」の中で使用されたのが最初であると言われています。日本では当初この訳語に「戸外教育」が当てられましたが、1960年代頃から用語「野外教育」として一部の研究者の間で用いられるようになりました。今日においても「野外教育」は市民権を得た用語とは言えず、「野外活動」のほうが耳になじみがあるようです。


 野外教育の定義のうち最も包括的なものは

 「野外における(in the outdoors)、

  野外について(about the outdoors)、

  野外のため(for the outdoors)の教育」という捉え方です。


 この定義における「in」は、野外教育が行われる場所を示しています。野外教育は野外すなわち自然の中で行われ、自然に関する様々な直接体験の機会を提供します。


「about」 は野外教育で扱うテーマを示しています。野外教育は野外そのものに関するテーマの他にも諸々のテーマを扱うことが可能であり、広義には自然資源と人間の相互作用に関するテーマも扱います。


「for」は野外教育の目的を示しています。この「for」には for understanding the outdoors 「野外を理解するため」と for use the outdoors「野外を(有効に)利用するため」の二つの意味が含まれています。野外教育の目的は野外に関する知識・技術・態度の習得であり、野外を理解し有効に活用するために一人ひとりの自然に対する責任と配慮が求められます。


 野外教育はこの「in」「about」「for」のうちどの部分を強調するかによって自然教育、環境教育、余暇教育、健康教育、安全教育、冒険教育、情操教育等、様々な教育として機能し得る広範な概念です。


 野外教育必要論の背景には居住地周辺における自然の減少があると言われています。自然とふれあう機会を野外教育の場で補うことも今日的な課題のひとつとして自覚していますが、一方で、日常の生活に自然とのふれあいを確保していく、あるいは取り戻していく、という理想も心に留めておきたいと思っています。


 現代生活の便利さを捨てて自然に回帰することは、多くの人々にとって非現実的であるにしても、もう少し自然を物理的にも心情的にも近くに置いてみたほうがいいのではないか、そうすることで自然とのかかわり方や折り合いのつけ方について各人が考える機会を持つことは大切だなぁ、そこからいろいろ変わっていくのかもしれないなぁ、と考えています。


 ことさら構えることなく自然とふれあえるようになればあえて野外教育が意識されなくなる、ということにもなるかもしれません。野外教育はそのきっかけづくりの立場にもあるといえます。


      「自然から離れれば、こころが頑(かたく)なになる」

                     (アメリカインディアン:ラコタ族の格言)

     

               2004年7月 東横学園女子短期大学『花桐』第84号より.

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